幾霜::残日録::2008/08/11 (月)

 

移籍先を探しています。系統樹推定法やメタバーコーディング法などに詳しい研究者を探している方がおられましたらご一報下さい。

2008/08/11 (月)

[Topics] ロシア軍がグルジア本土に侵攻 - 23:50:10

 あーあ、グルジア側が停戦に向けて差し出した手は完全に振り払われた。

 確かに開戦の非はグルジア側にあるし、グルジアの領土保全が住民の命より重要だなどとは思わないが、非戦闘地域への空爆や無制限の戦線拡大は明らかに度を超えている。確かに大国としては小国相手に勝利を最大化するには小国が対処できない戦線の拡大はセオリーではあるが、これでNATOの介入を引き起こせば元も子もないだろう。自治州・自治共和国でさえグルジア国内なのだが、その外側のグルジア本土(という呼び方も奇妙だがとりあえずそう呼ぶ)へ侵攻したとあってはNATOや米国が黙ってはいないだろう。もしもこれを容認し、ロシアに「やって良かった」という印象を残せば、ウクライナで同じことが起きかねないと考えるのは自然なことではないだろうか。

 このままでは、NATOの介入か、介入しなければ近い将来のウクライナでの紛争が起きるのではないだろうか。

[Internet] Gmailへ転送しているユーザーはそれを明示すべき - 23:12:37

 Gmailはプライバシー侵害が指摘されているサービスです。他のフリーメールアドレスに関しても同様に明示すべきであると考えます。メールを非フリーメールアドレスからGmailへ転送している人がいますが、その場合、送信者からはそれを知ることができません。返信されてきたメールのヘッダを見てはじめて知ることがよくあります。しかし、この時点で情報はGoogleをはじめとするサービス提供業者に内容が漏れてしまっているかもしれないのです。事前に分かっていれば、それなりの対処を取ることができますが、事後に分かるのでは手遅れになることもありえるでしょう。フリーメールアドレスに直接送信する場合には見れば分かるのでこの問題は発生しません。もちろん、そんなに気になるならPGPなりGPGで暗号化しろと言われるかもしれませんが、こちらからの送信は問題無くとも受信側で復号化の方法が分からない人がほとんどなので現実的ではないのです。

[Internet] Google Maps ストリートビューはどうすれば受け入れられるようになるか? - 22:00:13

 Googleカーは約2m30cmの高さから全方位の光景を約10m間隔で撮影して回っているそうです。2m30cmの視点の高さを有する人はまずいません。そのような高さから撮影すると、2m20cmの塀の中が写ります。これはのぞき、盗撮に当たるでしょう。軽犯罪法や各自治体の迷惑防止条例に抵触するでしょう。ましてそのような画像を全世界に無断で公開する権利がGoogleにあるわけもない。そう遠くない将来に逮捕者が出てサービス終了になるんじゃないでしょうか。

 そもそも、このサービスは日常的にどのような人が利益を得るものなんでしょうか。確かに、初めて行く待ち合わせ場所の確認や、友人宅の確認に便利ですが、日常的に利用するものでもないでしょうし、あれば便利ですが無いとどうしようもないわけでもありません。したがって、最も大きい利益を得る人は空き巣や車上荒らしを生業とする人であると考えられます。

 また、除外のオプトアウト方式(対象者が除外を申告する方式)にも問題があります。広告メールはオプトアウトが違法化され、オプトイン(対象者が許可を申告する方式)しか認められなくなります。このGoogle Maps ストリートビューでは、「被害者が、全世界に公開されてから、自分でアクセスして被害を見つけ出し、除外を申告しなければならない」というオプトアウト方式を採っています。そもそもインターネットを利用していない人は、ケータイからのネット利用を除外すれば実は日本では多数派かもしれません。そのような状況で被害者側に確認を強いるのはフェアではありません。

 どうも、Googleには「その時・その場所に限定して公開されている」ことを「全世界の不特定多数の人々に継続的に公開し続ける」ことを区別する能力が備わっていないようです。

 では、どうすればいいでしょうか。ただサービスをやめるというのは簡単です。しかし私はこのサービスに可能性も感じています。ですから、どうすれば多くの人に受け入れられるサービスになるかを考えてみましょう。

 まず、2m30cmという「異常な高さ」からの撮影はやめるべきです。これはもう絶対です。これを守らないことにはどうしようもありません。次に、同じ道路を複数回巡回し、何度通っても同じように存在するものだけが写し出されるように画像を加工して公開するのがよいでしょう。そうすれば道行く人などは写りません。通行人が常時多すぎて消せない場合には工夫が必要となるでしょうが、場所が特定されれば人物を特定することはそう難しくない状況は容易に想像できます。顔を消せばいいなんて簡単なものではありません。こうすれば撮影される側の人に「公開の」許可を求める必要は無いでしょう。公開されないのですから。また、待ち合わせなどに使われる重要なランドマーク、および右折・左折・直進の目印になる道路標識・建物(これが微妙ですが)以外は解像度を落とすようにするべきです。最後に、Googleカーが走って回る場合には、自治体・警察に事前に連絡して住民への周知を図る必要があるでしょう。巡回時にアナウンスを流しながら走るようにもすべきです。先ほど「公開の許可は得る必要が無い」と書きましたが、それだけでは「撮影の許可」は得ていないのです。公開さえしなければスカートの中を撮影してもいい、なんてことはもちろんないわけです。公道上や、公道から見える場所にいる人がそれと同じとは言いませんが、多くの人に受け入れられるには必要なプロセスだと思います。

 ここまでやっても、まだオプトアウト問題は残ります。つまり、被害者の側がいちいち確認して通報しなくてはならないという問題です。人間が写っていないとしても、建物も全世界に公開されたくないというニーズはあるでしょう。が、個人的にはそこまで配慮する義務は無いと考えます。窓の中が写りこんでいた、なんて問題があった場合は本人かどうかは関係なく通報を受け付けるようにすればよいでしょう。とは言え、対処前にキャプチャした画像を公開する輩は出るでしょう。そのような場合は事前に契約でキャプチャ画像の無断公開を禁止し、公開には断固とした法的措置をとり続ける必要があるでしょう。

 車上荒らしにとってストリートビューが使えるのは、公道を駐車場代わりに使っている無防備な車を見つけられることがある、という点が大きいと考えます。ですから、複数回撮影を繰り返して写りこまないことがあるなら除去するという対処を取ればそのような車を見つけることは困難になるでしょう。また、何度通っても停められているなら、警察に通報してその車を取り締まってもらえばいいでしょう。問題は公道から見える範囲にある車ですが、それは一般人からの通報で画像を削除、もしくは加工することで対処するしかないでしょう。

 空き巣にとっては、下見に使える場合があることが利点と言えるでしょう。しかし、通行人を除去することで人通りの多さを判断することはできなくなります。侵入しやすそうな家を見つけるということも、解像度を下げれば困難になるでしょう。Googleはゼンリンのデータを持っていますし、巡回担当者も景色を見ているでしょうから、それらの情報を用いて住宅地とそうでない場所を区別することは可能なはずです。ですから、住宅地でのみ解像度を下げるということも可能でしょう。

 以上のような措置をとることで、ほとんどの人にとって受け入れることができるサービスにすることは可能だと考えます。逆に言えば、上記の対処をとらなければ、現状では十中八九違法と判断されるでしょうし、違法でなくとも違法化されるでしょう。そうなる前に、Googleが賢明な対処をとることを望みます。

参考ページ
スラッシュドット・ジャパン | Googleマップのストリートビュー、日本でも
スラッシュドット・ジャパン | Googleストリートビューへの日本の反応が海外でも話題に

追記 - 2008/08/12 02:11:53
 「ぶるべあのTech. ぶろぐ」さんからのトラックバックにお応えしてストリートビューはどうすれば取り締まれるかという記事も書きましたのでご参照いただければと思います。

追記 - 2008/08/12 02:34:24
 ゆきちさんの指摘に従い、断定は避けるように表題を変更しました。元は「Google Maps ストリートビューは違法である。ではどうすればよいだろうか?」でした。

追記 - 2008/09/02 23:18:08
 はてブコメントを見ると、どうも私の意図が理解されていないようなので補足しておきます。まず、私はストリートビューはなくなって欲しくありません。無くなると困るけど現状では反発食らってお蔵入りになってしまうかもしれないから、その対策を考察して記したのがこのエントリーです。また、私は使うアテがあります(だから無くなったら困る)。使い道ワカンネ、ってことはありません。何に使うかというと、研究用の昆虫採集ポイントの探索です。山の方のやや細い道までカバーしてくれるとそういう用途に使えるので大変期待しています。ルート指定してスライドショー表示できると最高ですね。あと、2mオーバーのでかい人はどうすればいいんだということですが、私が問題視している(というか問題視されそうに思う)のは、「対処できる人がやっていない」上に「見るだけでなく撮影までしている」という点にあります。背が高い人は「しょーがない」し「撮影しているわけではない」のでOK。それでも、撮影したり、それを公開したりすればアウトでしょう。「バスに乗っている人はどうするのか」という指摘もありますが、それも背が高い人と同じ扱いでいいのではないでしょうか。

 Googleは「邪悪でない」ことを旨としているそうですが、それだけでは不十分です。「誠実である」ことが必要なのだということを彼らは理解しなくてはなりません。

Go to front page
Comments and TrackBacks
Web antenna system: NaTsuMi
Search in this site
Access Count : 1960565